AIという言葉で隠された真に大切な課題

人間のようなAIよりも人類を幸せにするIAやIIをというお話

AI – その革命はまだ起きていない、そして起きそうもない
 ↑ 原文の筆者や原文の意義などについての前口上が上手なので最初と最後の部分のみこちらを読みつつ

翻訳:人工知能 — 革命いまだ成らず
 ↑ 原文の翻訳部分についてはこちらの記事の方が忠実で読み易いと思うのでこちらを読むことをお薦め

筆者はAI(本文では人間のような知能のシステム)という言葉の乱用にお怒りだ
その全能感漂う言葉により眼前にある無数の課題から目を逸らされてしまうから
寧ろ我々が切に求めているシステムに人間のような知能は必要でも十分でもない

我々が求めているシステムは人間に代わるものではなく人間を助けるものなのだ
・IA(知能増強):例)検索エンジン、機械翻訳など人間の能力を増強するもの
・II(知能インフラ):例)運輸、医療、商業、金融などの課題を解決するもの

例えば自動運転車を考えてみるが実はこの問題には人間のような知能は必要無い
個々のエージェントの集まりではなく航空管制のシステムを模倣した方が安全だ
これはAIよりIIとして実現すべき例だがさてそれでもIIよりAIが大事だろうか?

上記が筆者の大まかな主張であるのだが私が特に心を打たれたのは著者の体験談

著者の妻が妊娠して超音波検査を受けた際にダウン症の兆候が見付かったという
しかし後にその検査で使用した機器が捉えたノイズによる誤診だったことが判る
実は統計分析を行った時代と機器が作られた時代が異なることによるものだった
最先端の機器はセンサー感度が高くそれによりノイズを拾ってしまっていたのだ
事実その病院では機器を新しくして以降ダウン症診断の件数が増えたのだという

超音波検査でダウン症の兆候が見られた場合に多くは羊水穿刺検査に進むのだが
この検査は当時1/300の確率で胎児を死に至らせるというリスクがあったという
つまりこのシステムの誤診により毎日毎日不必要に多くの赤子が亡くなっていた

上記を通して著者の言う眼前にある真に大切な無数の課題というのが見えてくる

問題の所在は「様々な場所と時間において変数と結果を測定して統計分析を実施
それからその結果を別の場所と時間で利用する」という医療システム自体にある

土木工学の存在前からビルや橋梁は建築されそれらは悲劇的にも容易く崩壊した
同様に”大切な何か”の存在前に現在の推論-意思決定システムは構築されてきた
これらは今や社会規模のシステムとなっているが深刻な欠陥を既に露呈している
土木工学のような”大切な何か”は残念ながら現在のところ研究すらされていない

“大切な何か”の解明こそが真に大切な課題であり新しいエンジニアリングなのだ