ブロックチェーンはインターネット以来の革新的な技術
2,3年前から注目してきた技術。
を読んで、確かにそう感じている。
「インターネット以来」という言葉の違和感はあって、インターネットを代替するかのような印象を受けるけど、インターネットを前提としている技術である。
特徴としては、
・二者間の価値移転が可能
・データが改竄されない、複製されない
・管理者不在のネットワーク
というところで、「信頼」のプロトコルとして機能し、その上にBitcoinのようなアプリケーションが載ってくる。
今更いう必要はないけれど、「Bitcoin=ブロックチェーン」ではない!
ブロックチェーンの歴史
ブロックチェーンは、Bitcoinを実現するための技術に過ぎなかった。
ということにはちょっと驚いた。
2008/10/31 | Satoshi Nakamotoが出した「Bitcoin:A Peer to Peer Electronic Eco System」という論文で発表。 |
2009/1/3 | Genesis Block作成。 「The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for banks.」 |
2009/1/8 | MLに「Bitcion v0.1 releaased」という登校とともにソースコード公開。一度も停止することなく動いている。 |
2009 | 初期のマイニングは自前でやっていたが、2009秋ごろにはBitcoin公式フォーラム、USドルとの交換が開設。 |
2010/5/22 | ピザ2枚と1万BTCと交換された。(Bitcoin Pizza Day) |
2010/7 | 専門誌でBitcoinが取り上げられ、さらに加速。 |
2011/4/19 | 世界初のアルトコイン「Namecoin」が登場。 |
2013 | 一時1149ドル/BTC。 |
2015/7/30 | 「Ethereum」が登場。 |
2015/12 | ビジネス向けブロックチェーンプラットフォーム「Hyperledger」が登場。 |
2017/8/1 | Bitcoinはハードフォークを実施し、BitcoinとBitcoinCachに分かれた。 |
ブロックチェーンとは
ちなみに、JBA(日本ブロックチェーン協会)によるブロックチェーンの定義は以下の通り。
1)「ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過とともにその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。」
https://jba-web.jp/
1) A blockchain is defined as a protocol, or implementation of a protocol, used by an unspecified number of nodes containing Byzantine faults, and converges the probability of consensus reversion with the passage of time to zero.
2)「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。」
2) In a broader sense, a blockchain is a technology with a data structure which can easily detect manipulation using digital signatures and hash pointers, and where the data has high availability and integrity due to distribution across multiple nodes on a network.
1) については、狭義のブロックチェーンのことで、パブリックブロックチェーンは取引が100%確定するわけではない(「ファイナリティ=決済完了性」がない)ことが重要。
2) については、広義のブロックチェーンのことで、DLT(Distributed Ledger Technology)のことと捉えて良さそう。
要するに、
・データ同一性:改竄(変更、削除)ができない
・高可用性:ダウンしない
・ネットワーク分散型のデータベース
のこと。
※ブロックチェーンは、ブロックの集まり。
※ブロックは、前のブロックのリンク(ハッシュ値)、Nonce、トランザクションの集まり。
※トランザクションは、取引データ。
ネットワーク分散型のため、全てのノードにデータが保持されているため、
・基本的にはデータが全て公開されてしまう
・取引の承認速度が遅い
という問題がある。
これらの問題解決のために、コンソーシアムチェーン、プライベートチェーンなどが開発されている。
ちなみに、ブロックチェーン?トランザクション?には、任意の文字列を登録するスペースがあり、結婚する二人の名前を刻むことも可能とのこと。
ブロックチェーンがもたらすもの
・非中央集権型のモデル
→信任された第三者が要らなくなったのではなく、
ブロックチェーンによってデジタルな第三者に置き換わった。
・トラストレス
→事業者を信用するコストが少ない性質。
・ゼロダウンタイム
→ノードにデータを持たせるため、複数ノードがあればデータ消失の可能性は限りなくゼロに近くなる。
・高スピード・低コスト
→国債送金などであれば、非常に高スピードで低コストに実現できる。
※現状では通常のデータベースの方が高速。ただし、耐障害性はブロックチェーンの方が高い上、データの改竄、二重支払が生じない。
ブロックチェーンの種類
パブリックチェーン(不特定多数)
BitcoinとかEthereumとか。
ビザンチン障害に対応させる必要あり。
→Bitcoinであれば「ProofOfWork」というルールに基づいて承認された取引が正当なものと認められる。
→ネットワーク上の取引データを集めてブロックにする際に行われる大量のハッシュ計算のルール及びその作業の証明。大きなハッシュパワー(51%以上)はブロックチェーンのセキュリティにとって重要。
ノードが承認作業を行うことでインセンティブが発生する。
→ルール変更の方向性に合意できなかった場合「ハードフォーク」が発生する。
○メリット
・管理者がいない
・透明性・公共性が高い
・ルール変更には正当性が必要
→BIP(BitcoinInprovementProposal)を出して合意に到達すれば実行される
○デメリット
・承認に時間がかかる
BitcoinのProofOfWorkは承認されるまでに10分程度かかる。しかも決済まで(取引がほぼ変更されないとみなされるまで)6回の承認を経る必要がある。
→ライトニングネットワークのようにリアルタイムで決済できる仕組みも開発中。ライトニングネットワークとはオフチェーン技術の一つでBC外で複数の取引をして結果のみをBCに記録する。
・データ容量問題
最初のブロックから最新のブロックまで数珠つなぎになっているのでデータは肥大化する。
データサイズもProofOfWorkの計算量(電力)も肥大化する。
・ファイナリティ問題
パブリックチェーンにおいては基本的にいつまでも取引は完了しない。取引データの上に新たなブロックが十分に積み重なったら取引が覆る可能性が限りなくゼロに近くなるため、取引が確定したものとみなす。取引の承認は「多数決」なのでネットワーク全体の51%以上の計算能力が必要。
・取り消し不可能
・未完成な法整備
取引の確定を遠手としている現在の社会と整合性が取れない。弁護士も含めた専門家は不足。
→めちゃくちゃ不足。
コンソーシアムチェーン(複数組織によって管理)
HyperledgerとかCordaとか。
取引の承認作業は管理者が操作するノードが担うため、承認作業はパブリックチェーンより速い。情報秘匿も可能。
同じ業界ないで運用されるのが効果的。
プライベートチェーン(単一組織によって管理)
企業内通貨、mijin
取引承認の高速化や情報秘匿が可能。
※プライベートとコンソーシアムの違いは、ネットワークへの参加が単位の組織に限定されていないこと。
○メリット
・承認速度がはやい
Bitcoinは1秒間に5-7トランザクション。
プライベートは数百-数千。
ファイナリティがある。
・情報共有の内容と範囲を限定可能。
・インセンティブが不要。
○デメリット
・透明性・公共性が低い
管理者が改竄は可能。中央集権型と変わらない。
・安全性・可用性問題
承認するノードが限られているため可用性は低くなる。
ブロックチェーンの市場規模
証券取引へのインパクトは、2017年時点で741兆円とのことだが、証券取引以外の取引・データ管理・自動化によるインパクトについても、67兆円にも及ぶということ。これらは新たに創出されるのではなく削減される規模であることも注視すべき点。
価値の流通・ポイント化、プラットフォームのインフラ化
地域通貨、ポイント、クーポンなどの分野。信用創造も加納。
→二重支払問題の解決が可能
※「Sコインプラットフォーム」では実証実験が始まっている
→権利証明行為の非中央集権化の実現
土地の登記、特許、電子カルテ、出生記録などの権利関係や公的証明。安全な個人情報共有が可能。学歴、資格、特技などの登録で大学入試や就職活動に役立つ。
保険金請求から支払までを短縮可能。
遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現
資産の利用権の移転情報、ユーザ同士の評価情報をブロックチェーン上に記録可能。
P2Pで管理者が不在なため規制が厳しい分野でも威力を発揮しそう。
スマートコントラクトを用いれば、ブロックチェーンで代金を払うと電子キーが発行されて利用できるようになるといったようにレンタカーサービスの利便性は高まる。
デジタルコンテンツの利用についても著作権を保護しながら二次利用、三次利用が可能になるかも。
オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現
トレーサビリティがあり、透明性が高く、改竄が困難なため、サプライチェーンの分野での活用が期待されている。
ジビエのトレーサビリティシステム
ダイヤモンドのトレーサビリティシステム
プロセス・取引の全自動化・効率化の実現
スマートコントラクトの利用で、契約条件、執行内容、将来発生するプロセスの登録が可能。
遺言、IoT、電力サービスとの相性も良い。
マイクロペイメントによってビジネスモデルを変化させる可能性もある。
ローン業務への適用
※Society5.0